読書日記PNU屋

読書の記録

2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

小国綾子「魂の声 リストカットの少女たち 私も「リスカ」だった」

2005.5講談社\1,365 表紙画が私の好きな味戸ケイコだった、そんな理由からなんとなく 手に取った本書。実にディープであった。類書と異なる大きな特徴は、ライターである著者にもかつて リストカットをした経験があるということだと思う。 経験者だからこそ…

荻原規子「風神秘抄」

2005.5徳間書店\2,625 時は平安末期、笛が好きな草十郎は平治の乱に源氏方の武士 として参加する。敗走のうちに主君とはぐれた草十郎は、 舞の名手・糸世と運命の出会いをするのであった。 しかし、笛と舞が出会った時におそるべき力が発動することが、 二人…

伊坂幸太郎「死神の精度」

2005.6文芸春秋\1,500 太陽を見たことのないほどの雨男・千葉のお仕事は対象となる 人間を調べ、ある判断を下すこと。可か、見送りか。 とぼけた千葉が見つめる人間模様とは。 ミステリーちっくな死神ものというと柴田よしき「窓際のアンクー」を 思い出すが…

五十嵐貴久「TVJ」

TVJ2005.1文芸春秋\1,890 巨大コンピュータに制御される新社屋を建てた「テレビジャパン」。 社員の由紀子は結婚間近の今一番ハッピーな社員…のはずだったのだが、 いきなり武装した男どもが攻め込んで来て!由紀子の運命やいかに? オビには「ダイ・ハー…

江國香織「赤い長靴」

赤い長靴2005.1文芸春秋\1,470十年以上にわたって夫婦二人暮らし、子供はない。 はたからはむつまじく見え、浮気にも縁が無い日和子と逍三だが、 彼らの内面は…。 これは或る意味ホラーとも読める。子供がいないということは、 親にならないということであり…

大倉崇裕「やさしい死神」

やさしい死神2005.1東京創元社\1,680 落語雑誌編集部の間宮緑が活躍する、落語ミステリシリーズ第三弾は、 小粋な連作集である。表題作のほか、「無口な噺家」「幻の婚礼」 「へそを曲げた噺家」「紙切り騒動」を収録。 「三人目の幽霊」「七度狐」に比べ、…

角田光代「しあわせのねだん」

2005.5晶文社\1,470 お金と価値観にまつわる、ゆかいなエッセイ。 うわぁ、親近感持っちゃったなぁ。すぐなめられてカモにされるところとか、 待つのがキライだとか、サイフにいつも大金を入れとかないとか、 まるで自分のことを見ているようだった。ヘヴィ…

シオドア・スタージョン「ヴィーナス・プラスX」

2005.4国書刊行会\2,310 目覚めたそこは、奇妙な人々のいる異世界「レダム」だった。 チャーリー・ジョンズはレダム人から彼らのことを学ぶようたのまれるが…。 導入がいい。 現代人チャーリー・ジョンズがいきなり目を覚ましたら奇怪な世界に いるのである…

宮部みゆき「孤宿の人」上・下

2005.6新人物往来社\1,890 望まれずに生まれた少女「ほう」は虐待されながらも強く生きのび、 丸海の地で医師の家の女中となる。 ところが安住の地と思われた医師の家でも、悲しい事件が…。 そのころ、江戸からは鬼魔物とおそれられた加賀様が流人として 丸…

西尾維新「ネコソギラジカル(上)十三階段」

2005.2講談社\1,134弟子を失ったいーちゃんに襲い来る、狐面の男の魔の手。 待ってましたの援軍を得て、彼は今最終決戦の地に赴く。 今回は上巻のせいか、さわりだけといった感じ。 メイドマニアとシスコンにまみれて今回も萌え道をかすめている ところがニ…

恩田陸「ユージニア」

2005.2角川書店\1,785 誰もが尊敬する旧家でお祝いの宴が開かれた。 しかし祝いの席は死で彩られる。大量殺人事件にかかわり、 とらわれていった人々はいかに生きていったのか…。 これは「Q&A」の手法をさらに発展させて、ムードあるミステリー となって…

愛川晶「六月六日生まれの天使」

2005.5文芸春秋\1,950 気付くと見知らぬ男の部屋にいた女。女はどうも自分に関する記憶を 失ってしまったらしい。記憶と男女のサスペンス。 えろえろ。読むのがきつかった。 誰一人として私にとって魅力的な人物がいないのだもの…。 悲しい過去を背負ってい…

近藤史恵「賢者はベンチで思索する」

2005.5文芸春秋\1,785 あこがれのデザイナーになる夢破れ、ファミレスでアルバイトする 久里子。ファミレス常連のおじいさんと、職場の外で会話するように なった久里子は前向きな気持ちを取り戻すが。「ファミレスの老人は公園で賢者になる」「ありがたくな…

山本甲士「とげ」

2005.3小学館\1,785 市役所市民相談室担当の倉永は、市民のイチャモンと無能な 上司部下どもに日々ストレスをつのらせていた。 たまった怒りが噴出するとき、倉永がとった行動とは…。 嫌なことがあるとアルコールごまかしていく倉永は、同情の余地は あるが…

木原浩勝・中山市朗「新耳袋 第十夜」

2005.6メディアファクトリー\1,260 怪談の名作シリーズ・新耳袋も本作でついに完結! メディアファクトリー版から追いかけた私だが、感無量である。 読んで思ったこと。す・ば・ら・し・い!不可思議な話から心温まる話、そして正統派背筋凍る怪異まで、 ヴ…

吉村萬壱「バースト・ゾーン−爆裂地区」

2005.5早川書房\1,785 日本にはテロリンなるテロリストがはびこり、テロリンの行う爆破、 そして生物兵器で住民は多大な被害を受けていた。 妻子が奇病に侵された肉体労働者・椹木武は愛人の寛子を働かせて 金をむしり取っていたが、思い立ってテロリンと闘…

藤原伊織「シリウスの道」

2005.6文芸春秋\1,800 25年前、13歳の時に起こったあの出来事は、三人の秘密だった。 広告会社に勤める辰村は、13年前の親友・明子があの件で脅迫されて いると知らされる。公私ともに正念場をむかえた辰村の秘策とは…。 楽しく、面白く、はらはらして…

アレックス・シアラー「スノードーム」

2005.1求竜堂\1,260 科学者・クリストファーが失踪。上司にのこされた原稿には、 小説仕立ての驚くべき出来事が書かれていた…。 人生の孤独と家族愛を謳いあげた作品。 現代は「暗闇の速度」という感じなのだろうが、邦題は「スノードーム」。 いや、確かに…

バリーユアグロー「ケータイ・ストーリーズ」

2005.4新潮社\1,470 不可思議な掌編がぎっしりつまった、ユアグロー色の1冊。 ケータイで配信されたこともあって、短いのだが 内容は深いので読み応えあり。 センス・オブ・ワンダーがツボにくる・こないの問題もあって、 全てが腑に落ちるというわけにはい…

横田増生「アマゾン・ドット・コムの光と影」

2005.4情報センター出版局\1,680 「 潜入ルポ 躍進するIT企業 階層化する労働現場」というのが副題。 アマゾンの倉庫で本のピッキングに5ヶ月携わった潜入ルポ。 アマゾンをネット書店として利用したことはあれど、ここまでアマゾンが 秘密主義であることは…

町田康「浄土」

2005.6講談社\1,680 肥大する自我と非常な現実との折り合いに苦しむ人々を描く短編集。 いや、すごい。面白い。エログロナンセンスからエロ成分だけ除去したが ごとき、残酷さと不条理が充ち満ちた小説集である。 「犬死」近頃不幸ばかりに襲われる作家が、…

戸梶圭太「嘘は止まらない」

2005.6双葉社\1,680 激安詐欺師の須波は、イケメン早乙女&美女の沙理とともに 大がかりな詐欺プロジェクトを立ち上げる。その小道具として 必要なのは…ンゴラス国の怪男児…?! トカジ節健在ではあるのだが、ハッチャケぶりはやや少なめかも。 本作は犯罪を…

五條瑛「上陸」

2005.4講談社\1,785金満・安二・アキムの肉体労働者デコボコ三人組と 密航者の意外な関係とは?人情しみる連作ミステリー6編を収録。 金満・安二・アキムの三人のキャラが立っており、ユーモアあふれる 会話が楽しめる。毎回不法労働者にまつわる事件が取り…

西尾維新「ネコソギラジカル 中 赤き制裁vs.橙なる種」

2005.6講談社\1,134 “橙なる種”面影真心に、なすすべもないいーちゃん達。 あの人類最強までもが…? 今までのなつかしキャラも総動員しつつ、 軽快に残酷におくられる物語の行方はいずこ? 戯言シリーズ最終巻まであと1冊。いやぁ残酷だねっ! あの人やあの…

いしいしんじ「ポーの話」

2005.5新潮社\1,890 泥の川をはいずり回ってうなぎを獲る「うなぎ女」たち。 うなぎ女から生まれた赤ん坊はポーと名付けられ、母達の愛を 一身に受けて育つが、旅立ちの時がやって来て…。 これはビターなファンタシィ、大人のためのおとぎ話? 「白の鳥と黒…

藤岡真「ギブソン」

2005.4東京創元社\1,785 早朝ゴルフのために、高城部長を迎えに行った日下部。 しかし部長は忽然と消え失せていた。 部下とともに高城部長を捜索し始める日下部だが。 ギブソンとはなにか。私はてっきりギターのことかと勘違い していたのだが、カクテルの名…

工藤隆雄「山のミステリー」

2005.5東京新聞出版局\1,575 山と人、幽霊譚から自然との関わりまで、山にまつわるいい話、 怖い話を一挙収録。舞台となった山小屋の紹介一覧付き。 実話怪談好きな私は、登山怪談集だと思って本書を購入した。 ところが予想は良い方に裏切られ、怖い話は抜…

コミケに出ます。

8月14日、日曜日東地区 “ピ”ブロック-56a 「わんタンくらぶ」 でございます。 サークル参加で受かりました! うれしい。 7割くらいの確率で落ちると思いこんでいたので、受かった今 大急ぎで新刊用原稿をを描き始めました。画像は売り物その1.イヌ…

恩田陸「蒲公英草紙 常野物語」

2005.6集英社\1,470 医者の娘・峰子は槙村家の病弱なお嬢様・聡子の親友となる。 ある時槙村家を訪ねて来た春田一家は不思議な人々で…。 峰子が日記から当時を振り返るという形式。 よい人々がたくさん出てくる。 とくに恋という自覚もない幼い恋の道行きは…

角田光代「この本が、世界に存在することに」

2005.5メディアファクトリー\1,470本と、本好きにまつわる物語を収録した、本好きのための短編集。 「旅する本」「だれか」「手紙」「彼と私の本棚」「不幸の種」 「引き出しの奥」「ミツザワ書店」「さがしもの」「初バレンタイン」 「あとがきエッセイ 交…