戸梶圭太「嘘は止まらない」
2005.6双葉社\1,680
激安詐欺師の須波は、イケメン早乙女&美女の沙理とともに
大がかりな詐欺プロジェクトを立ち上げる。その小道具として
必要なのは…ンゴラス国の怪男児…?!
トカジ節健在ではあるのだが、ハッチャケぶりはやや少なめかも。
本作は犯罪を扱ってはいるが、たとえば「アウトリミット」に見られた
ような、息詰まるような緊迫感はない。
どこかのんびりとした印象なのは、ンゴラスの国風のせいか。
物語はツッコミどころありまくりである。それでも登場人物みなが
キャラが立っていて強烈なので、トカジファンならば楽しめるつくりなのだが。
しょっぱなから、誰が見ても不審者でしかないオベンバに須波が
注目するところにムリがある。
しかし意外な人物が後半の主役を引き取り、幕は華麗に閉じるので
後味がなんとも爽快なのだよ、この小説。
「さくらインテリーズ」のようなダイナミックさは見られないけれど、
みんなで小さなハッピーを分け合うとは、いつものトカジらしくもない
素敵なラスト。
どうした、トカジ!
だいじょうぶか、トカジ?
ノーフューチャーな激安畜生道物語に疲れてしまったのか?
こんなファンタジックな物語を書くなんて!
トカジマニアは首をかしげるかもしれないが、エログロ描写が控えめなこの1冊、
トカジ入門にピッタリなのかもしれない。