読書日記PNU屋

読書の記録

荻原規子「風神秘抄」

オンライン書店ビーケーワン:風神秘抄2005.5徳間書店\2,625

 
時は平安末期、笛が好きな草十郎は平治の乱に源氏方の武士
として参加する。敗走のうちに主君とはぐれた草十郎は、
舞の名手・糸世と運命の出会いをするのであった。
しかし、笛と舞が出会った時におそるべき力が発動することが、
二人に試練をもたらす。
 
ジャパネスク・ファンタシィである。二人の力を自らのために
用いようとする院との攻防も見所。私にとって発の荻原作品が本作だった
わけだが、単独でも楽しめる作品ながら、実は先行する「勾玉シリーズ」
ともリンクしているのだそう。著者あとがきによると、草十郎の姓、
鳥彦王の存在などがファンには膝を打つところなのだとか。
 
鳥彦王とその眷属とのやり取りがすごく楽しくて、
もっともっと浸っていたかったような気持ちになった。
しかし物語は二人の恋路の道行きになってゆき、そこが私にはやや
不満であった。決意を固めた糸世に対して、草十郎の立ち位置が
なかなか定まらないせいでストレスフルだったのか。
 
ぐいぐいと作中世界に引きこむ力を持った作品であるので、
「勾玉」三部作もぜひ読んでみたく思う。

p.s.カラスに救われる場面では、ついついカラスと
仲良しの「ゲゲゲの鬼太郎」(水木しげるの名作漫画)を連想して
しまった。