吉村萬壱「バースト・ゾーン−爆裂地区」
2005.5早川書房\1,785
日本にはテロリンなるテロリストがはびこり、テロリンの行う爆破、
そして生物兵器で住民は多大な被害を受けていた。
妻子が奇病に侵された肉体労働者・椹木武は愛人の寛子を働かせて
金をむしり取っていたが、思い立ってテロリンと闘う兵隊に志願する。
大陸には、想像もつかぬものが待ち受けていることも知らずに…。
「クチュクチュバーン」でこりゃあすげえ小説家が出たものだ!
と打ち震え、芥川賞受賞作「ハリガネムシ」でサド趣味についていけず
がっかりし、そして芥川賞後初長編の本作でふたたびがっかり。
確かに、「ハリガネムシ」よりは超常風味が炸裂してて良いのだけれど…
サド趣味は変わらず。
不可解な怪物と無力な人類の対立構図が「クチュクチュバーン」
収録の傑作「人間離れ」とそっくりで二番煎じの感が否めず。
まあキャラクターの変人度はパワーアップして書き込みが細かくなって
いるものの、それだけダイナミズムが薄れ、中だるみした気がしないでもない。
要するに、(無駄に、とは言わないが)本作は長すぎるのだ。
ただ、奇病の小ネタとか「神充」の設定だけはホラーとして楽しむことが出来た。
セックスシーンがふんだんに出てくるが、機械的な残虐描写の繰り返しなので
ポルノグラフィとしてはおそらく機能しないだろう。鬼畜趣味の人は別にして。
「クチュクチュバーン」を超える作品を、ぜひとも読ませてほしいものである。
2002.2文芸春秋\1,300