恩田陸「蒲公英草紙 常野物語」
2005.6集英社\1,470
医者の娘・峰子は槙村家の病弱なお嬢様・聡子の親友となる。
ある時槙村家を訪ねて来た春田一家は不思議な人々で…。
峰子が日記から当時を振り返るという形式。
よい人々がたくさん出てくる。
とくに恋という自覚もない幼い恋の道行きは楽しかったし、
椎名氏はビターで良かったと思う。
私、恩田陸大好き。新刊もこうやって読んでいるし。
それでも。シリーズ前作の「光の帝国 常野物語」
2000.9集英社
で感じたゾクゾクやワクワクは、本書からは感じられなかった。
それは峰子に視点を固定したせいもあろうし、やや観念的な描写が多かったり、
本書のおおすじが予想できてしまうこともある。
そこがやや残念だったので、辛めの評価になってしまった。
本作はどういう位置づけなのだろう。外伝?超常能力の描写も、
知りたいところではぐらかされてしまうようで…小路幸也の
パルプタウン・シリーズを読んだ時もこの類の欲求不満になったものだが。
大人しく優しくせつない話なので、エキサイティングなことはなかった。
それでも「しまう」「響く」など何気ない日本語に妖しい空気をまとわせる
ところはさすが。
常野の謎は、まだまだヴェールをぬがないようだ。