小国綾子「魂の声 リストカットの少女たち 私も「リスカ」だった」
2005.5講談社\1,365
表紙画が私の好きな味戸ケイコだった、そんな理由からなんとなく
手に取った本書。実にディープであった。
類書と異なる大きな特徴は、ライターである著者にもかつて
リストカットをした経験があるということだと思う。
経験者だからこそのめり込みそうになるところを、
努力して絶妙な距離感を保って、真摯にルポされている。
人の心は、よく氷山にたとえられる。見えているところはほんのわずか、
見えないところに深く底知れぬものがあるという意味で。
本書を読んで、人の心というのはなんと繊細で難しいのかと嘆息した。
驚くのは虐待=リスカではなく、傍から見れば恵まれた家庭に育った子でも、
リストカットを行うことがあるということ。
結局、読了しても私にはなぜリストカットを行わずにいられないのか、
理解することは出来なかった。「血を見るとおちつく」ほどの悩みがある
ということは理屈としてはわかるのだが、ピンとこないのは私がケガを
したら痛い&痛いのはごめんだ、という側の人間だからだろう。
本書によってリストカットを行う人は悩んで行っているのだ、
ということだけはわかったつもりだけれど。
p.s.こちらは小説だが、
スティーブン・レベンクロン「自傷する少女」
1999.7集英社\600
とも共通するテーマ。
しかし、アームカットを「アムカ」と略して呼ぶのは知らなかったなぁ…
「花とゆめ」っ子世代だった私は、アムカと言えば「アクマくん」シリーズの
王子の本名を思い出してしまった。