読書日記PNU屋

読書の記録

アレックス・シアラー「スノードーム」

オンライン書店ビーケーワン:スノードーム2005.1求竜堂\1,260


科学者・クリストファーが失踪。上司にのこされた原稿には、
小説仕立ての驚くべき出来事が書かれていた…。
 
人生の孤独と家族愛を謳いあげた作品。
現代は「暗闇の速度」という感じなのだろうが、邦題は「スノードーム」。
いや、確かにスノードームも出てくるんだけどね。
原題の通りにしなかったのは、2004年にエリザベス・ムーン
「くらやみの速さはどれくらい/SPEED OF DARK」と、もろにカブるからだろうか。
 
のこされた原稿には、クリスの少年時代に場面変わって
「ありえない美の館」を経営する天才芸術家・エックマンのことが描かれる。
誰もがコンプレックスとは無縁ではないゆえに、このエックマン氏の
気持ちは読者の胸を打つであろう。エックマンの孤独は、我々誰もが
持っているものでもあるからだ。
 
それに対して、美しいだけで軽薄にしか思えぬポッピーや、
子供ながら猜疑心が強く計算高く思えるクリスに私は魅力を感じることが
出来ず、物語にのめり込むことに失敗した。
エックマンがあるものの内部と筆談で対話する場面では、

“そこにいないも同然の人の言葉であるのに、受け手は深く傷付く”

ということが、ネットにおける発言者と読者との関係を思わせて感慨深かった。