読書日記PNU屋

読書の記録

五十嵐貴久「TVJ」

TVJ

TVJ2005.1文芸春秋\1,890 

巨大コンピュータに制御される新社屋を建てた「テレビジャパン」。
社員の由紀子は結婚間近の今一番ハッピーな社員…のはずだったのだが、
いきなり武装した男どもが攻め込んで来て!由紀子の運命やいかに?
 
オビには「ダイ・ハード」とあるけどあれほどハチャメチャなわけでも
なかったな。ヒロインは確かにがんばっているのだが、その他の
キャラクターがみな大人しいというか、犯人ですらキャラが立っていなくて
なんだかぼんやりした印象。社屋を舞台にした鬼ごっことかくれんぼは
楽しいけれど、由紀子があまり頭がよろしくない感じに書かれていて
ちょっとなぁと思う。
 
まあ私のワガママなんだけど…ヒロインの闘う理由がすごく私的で利己的で、
私的ならそれでコミカルにテンポよくやってくれたら面白いのに、
どうもジタバタしていて停滞感があるというか。犯人側の意図もさほど
複雑なわけではないのに、警察のあのダメぶりはどうよとか、
いろいろなことが気になってしまう。
 
ヒロインに感情移入しようにも、直感ばかりで根拠のないことばかり言う
もんだからついていけない。ライトなひまつぶしを求めるのならこれでも
いいだろうが、物足りなさが残る読後感になってしまった。

p.s.転落までは面白かったのだけど、その後のご都合主義についていけず。
せっかく闘ってきたのに、私かよわい女性なんだもん、と媚びるのは解せない!