飛鳥部勝則「堕天使拷問刑」
堕天使拷問刑 飛鳥部 勝則 早川書房 2008-01-25 asin:4152088915 Amazonで詳しく見る |
両親を亡くした少年が引き取られたのは、母方の親戚が住む田舎町。しかし、そこは奇怪な風習の息づく怪しいところだった。連続殺人の犯人は、悪魔か天使か?ホラーミステリー。
あの事件があってから久しく新作が出ず、出版界から抹殺処分になったのでは…と気にしていたが、復活されたことを素直に喜びたい。しかもこのような力作で。
オカルティックなムードに彩られた本書は、ホラーファンにはとても魅力的だ。
作中作で披露されるホラー小説ガイド(単なるページ稼ぎかと思いきや、意外や意外、このパートはなかなか参考になって面白かった)や、奇怪な田舎町の奇妙な風習、一呼吸ごとに魔を含む怪しい空気などは三津田信三の「〜の如き〜もの」シリーズにも通じるものがある。本書はあちらほどロジカルな雰囲気ではないけれど。
中学生(しかも一年!)にしては登場人物が大人びすぎているとか、蛇の描写がホラーパニック映画におけるそれであり、現実に即していないなどの不満はあるが、それを吹き飛ばすほどのじめじめと薄暗く陰惨な描写、派手な殺人が光る一冊だった。読み終えて思うが、本書はホラーというより一風変わった青春物語なのかもしれない。
p.s.今回は著者お得意の絵ネタがないのがちょっとさびしいね。
この本を読むときこんな目に遭ったのは、また別の話だ。