三津田信三「首無の如き祟るもの」
首無の如き祟るもの 三津田 信三 原書房 2007-04 asin:4562040718 Amazonで詳しく見る |
首のない女性の祟りが恐れられる集落で起きた、首無し殺人事件。刀城言耶が登場する、民俗学ミステリー第三弾。
「厭魅」でミステリーとホラーの融合にうち震え、「凶鳥」では読み物としてはともかく、実行が不可能と思えるトリックに萎え、期待と不安相半ばして手に取ったのが本書である。結論から言うとたいへんに好みであった。なにしろ小学生当時に「エジプト十字架の謎」を読んで興奮したクチだから、首無し殺人には燃える(勿論、フィクションの中でだけ)。
戦後の慌ただしい時代を舞台にしたのに納得。横溝小説的な旧家のドロドロを書くには現代が舞台ではドライすぎるし、あるトリックは現代では成り立たないだろう。
今回も前作同様、多少無理めなトリックが仕掛けられているけれど、背筋凍らせるホラー的部分、蘊蓄たっぷりの民俗学的部分、伏線大サービスで緻密なつくりのミステリー部分それぞれのブレンドがまこと美味であり、程よい調合であると感じた。次回作にも大いに期待したい。
p.s.いきなり「凶鳥」だけ新書になって、素晴らしい装画シリーズがとぎれたのが残念。シリーズ次回もぜひこんなカバー画で!!