あさのあつこ「ぬばたま」
ぬばたま あさの あつこ 新潮社 2008-01 asin:4103063319 Amazonで詳しく見る |
人が山へ呼ばれるときを描いた、怪奇短編集。
あー、期待したのだが全く合わなかった。ファンの人はこっから先読まないほうがいい、といちおう明記しておく。
罪を押し付けられてリストラされた男や、スタンド・バイ・ミーごっこに夢中になる少年に感情移入できないのは仕方ないにしても、あまりに闇が薄く感じられた。文章とか文体がホラー向きではないのではないか。こないだ読んだ京極堂トリビュートでも、やけにこの作家さんの作品だけあっけらかんと明るくて(それが悪いのではないけれど)、違和感を覚えたことを思い出した。もしかしたら、小中学生くらいでも読めるようにわざと平易な言葉を用いて編まれたのかもしれないけれど、熟年読者の自分には、そこが物足りない。
一番がっかりしたのは「四」である。なぜなら川口まどか「死と彼女とぼく」1巻収録の「死が…みえる」と話の骨子が酷似しているのだ。ボーイ・ミーツ・ガールでよくある話とは言えど、男女の性別を入れ替えただけで設定や真相までがソックリ同じなのには複雑な気持ちになってしまう。残念。
p.s.「透明な旅路と」や「地に埋もれて」の路線なのだが、あっちのシリーズと違って核になる人間がいないだけで(強いて言えばおばあさん?それとも山?)、こんなにとっつきがよくないとは予想外。すると物語をまとめてくれる「白兎」くんは貴重な存在だったのね。