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読書の記録

デイナ・コールマン/Dana Kollmann「もう二度と死体の指なんかしゃぶりたくない! ある鑑識の回想/NEVER SUCK A DEADMAN'S HAND」

もう二度と死体の指なんかしゃぶりたくない!-ある鑑識の回想もう二度と死体の指なんかしゃぶりたくない!
山田仁子

バジリコ 2008-10-03
asin:4862381073

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 民間から鑑識に登用された女性のすさまじい体験記。巻頭には珍しい屍蝋など、さまざまなカラー写真も掲載。
 惜しい。最初、いきなり鑑識を辞めるシーンで始まる本書は、その後著者の幼少時代から鑑識になる前までの半生記に突入していく。これがアメリカン・ブラックジョークたっぷりで、翻訳文に慣れない自分は投げ出しそうになる。そこを乗り越えれば鑑識のショッキングにしてキャッチーな犯罪実話が期待以上の迫力で繰り広げられるのだが、自伝部分は後にまわしても良かったんじゃないかと思う。
 初の民間登用鑑識員として捜査に関わる著者だが、そこにはセクハラと大人気ない嫌がらせが付き物だった。きついきたない危険が揃い踏みのこの仕事を、イジメを受けてまでなぜ著者がやり抜けたのか不思議だ。それだけやりがいがあったということなんだろうか(著者がユーモラスに書いているだけかもしれないが、アメリカのイジメがやけに明るくドライなことには驚いた)。
 鑑識捜査の記述は素敵なのだけれど、『動物』と『排泄』の章はいらなかったのでは。面白いことは面白いけど、鑑識捜査じゃないし。まあ、著者の自伝を兼ねているということか。
p.s.実にアメリカ的なブラックジョークが満載なので、もしこれがジョーク耐性の少ない日本のウェブログだったら、大炎上の予感。面白いし、私は好きだけれど。
「私の王子様はどこかしら?」なんて、日本人だったらなかなか言えないよなあ。