読書日記PNU屋

読書の記録

恒川光太郎「夜市」

オンライン書店ビーケーワン:夜市2005.10角川書店\1,260

 
角川ホラー大賞ということで読んでみた。

「夜市」
代価さえ払えば欲しいものが手に入る、謎の夜市。
夜市の店々が、やや陳腐なイメージではあるのだけれど、
デヴュー作であることを考えると驚くべき作品。
緊迫感とサプライズに満ちている。ノスタルジー風の読後感は
やはり角川ホラー賞ゆかりの作家であり、2005年直木賞受賞で
話題になった朱川湊人作品にも似ているが、登場人物のニートぶりが今風だ。
 
「風の古道」
限られた人にしか見えぬ抜け道に入り込んだ子供たちは
どうなってしまうのか。
私は「夜市」よりもこちらが好きかな。「センパイ」と彼との再会
シーンにはやや違和感があるが(あんな別れ方をしておきながら、
あの再会は心情的に納得出来ない)、滅び廃れ行くもののはかない
イメージやまるで遠野のマヨヒガのような、どこか懐かしい不思議な
感覚は読者をひきつけるものがある。
 
次回作も是非読んでみたく思う作家が、また一人。