読書日記PNU屋

読書の記録

島田荘司「エデンの命題」

オンライン書店ビーケーワン:エデンの命題2005.11光文社\980


2篇の中編を収録。
 
「エデンの命題」アスペルガー症候群患者を集めた楽園のごとき
施設アスピー・エデンで平穏に暮らすザッカリだが、
ガールフレンドのティアがいきなり失踪してしまう。彼宛のメールには、
おそるべきことが暴かれていて…。
 
エリザベス・ムーン「くらやみの速さはどのくらい」など、
ピュアに見える主人公像が、今のトレンドなのかもしれない。
だがそこは島荘小説、安易に‘泣かせ’方向に行かないところがたのもしい。
 
ラストはややあっさりとした印象だけれども、そこまでのドキドキの
展開には酔わされた。旧約聖書から医学まで専門知識が語られていき、
興味深いが医学(生物学)に興味がないと知識の羅列がしんどく
感じられるかもしれない。
 
ヘルター・スケルター」目覚めたトマスは、美しい女医から
記憶障害の治療をもちかけられる。彼の記憶を引き出す
イムリミットは5時間…トマスの心の闇とは。
 
これもまた医学知識バリバリのミステリーで面白い。
真相もこれまた島荘らしい、こういうのを待っていたのだよ!!
という大胆にして華麗なる騙しが待ち受けていて大満足であった。
 
マーダー・ケースブックを初回から買っていた私のようなマニアには、
タイトルだけでハッとさせられるところがあり、とても楽しかった。
実在の犯罪ネタながら見事に調理され、島田荘司風味に仕上がっている。

p.s.「摩天楼の怪人」も華麗なる美酒であり、2005年後半の
島田本は大当たり。次回作も本当に楽しみだ!