読書日記PNU屋

読書の記録

絲山秋子「ニート」

オンライン書店ビーケーワン:ニート2005.10角川書店\1,260

 
人に執着しない。なるようになる。自由な人々の生き方を描く。
 
ニート」かつてニートだったあのころ。
「私」はあれから2年、小説家となったが彼は困窮していた。
現代的な方法で彼の苦境を知った「私」は…。
しようもないオトコなのだが、どこか憎めないニートくん。
私は気が短いので、この男女の恋愛にはなりえない友情が不思議で
たまらない。恋人同士のように肉体関係があっても、
子のような信頼関係があっても、友情以外には変化していかない、
むずがゆくもくすぐったくなる微妙な関係だ。
 
ベル・エポック」女の友情。
同棲の友人が少ない私には、よくわからぬ感情だ。謎だ。
ヒロインには怒りはない。ただ受け入れ、過ごしていく。
その悠々とした生き方を、瞬間湯沸かし器のようにすぐ怒る私は
見習いたくなってしまったりもする。
 
「2+1」ニートその後。
ニートくんとのどうにもならぬいかんともしがたい同居が始まった。
ダメ男なら、見捨てもしようがいいひとなんだね、ニートくん。
人が他人に出来ることって限られているのなーなんて実感がずしりと
わいてくる作品。苦いけれど、好きだ。
 
「へたれ」ある責任を取りたくない青年の内面の流動。
脈絡のない思考の流れがすごくよくうつしとられている作品。
そう、人ってこんな風に考えが飛ぶよね。でも私、この主人公は
好きではない。或る意味自由で幸せなのかもしれないけれど…。
 
「愛なんかいらねー」強引な男を許容する女。
これも、愛情ではない関係。いや、ねじれた愛なのか?
ううううんん、なんとも不愉快な関係である。しかしこの暴虐を
赦しているのは女性であって、女性側の受容なくしてはありえない
関係だというところは新しいのかもしれない。
 
モラトリアムやニートはそれを許容する人間がいて成立するもの
なのかもしれないと思った…。