メアリー・ローチ「死体はみんな生きている」
2005.1日本放送出版協会\2,100
みんなが知ってる火葬、土葬以外に、遺体がたどる道はあるのだろうか。
あるのだ。
しかも、解剖の献体・医学標本以外の想像もつかない選択肢が…。
著者が体当たりで取材をこなすスゴい1冊。巻末の資料文献一覧を見れば
わかるが、膨大な論文などから死体の歴史を丁寧に掘り起こしていて興味深い。
そして紙上で終わらず、著者は現場に出掛けていく。五感を駆使して、
その場所でなにが起こっているかを、若干のブラック・ユーモアを適度に
交えながら詳細に記述していくのだ。死を隠蔽する文化に育った日本人には、
著者のユーモアや容赦なき事実の記載が不謹慎に思えるかもしれない。
しかし、著者は両親の遺体をはじめとして、遺体に敬意をはらっていることは
その描写から十分に伝わってくるはず。
各章ごとに驚きの事実が明かされていき、読み終えるのが惜しいほどの
興奮の1冊であった。著者は豊富な文献を調べ多くの知識を持ちながら、
臭いという自然な感情、研究のためとはいえ数十体の首が並ぶ光景に
違和感を覚えるなどふつうの視点を忘れない。そこが
私のメンタリティにぴたりとマッチして、たいへんに興味深かった。
p.s.プラスティネーションがなぜプラストミック標本と名前を変え、
しかもドイツ製から中国製になったのか理由がわかってしまった。
コンポストは興味がある。製造工程を考えず、結果だけを見れば、であるが。