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読書の記録

桐野夏生「女神記」

女神記  新・世界の神話女神記 新・世界の神話
桐野 夏生

角川グループパブリッシング 2008-11-29
asin:4048738968

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 16で死んだ巫女が死の世界で出会った女神はイザナミだった。
 めがみき、ではなく「じょしんき」。事前情報を何も見ぬまま読み始めたので、現代ものではなく古事記の世界そのものであることに驚いた。
 小説単体で見れば、悲しくも魅力的な女神像が打ち出されており、見所も多々ある。だが、伝説や古典を題材にとった物語では山岸凉子の漫画に迫力においてかなわない、とも感じる。
 神話そのものを騙る部分は、作中の語り部が語っている設定なんだが、冗長で工夫がない。ここは退屈した。イザナギが出て来てからは、盛り返したけれど。ラスト、もうひとひねりほしかったかなあ…。
p.s.カバー画、加山又造かなあと思ったらやっぱりそうなんだね。この陰毛の描き方見て、そうじゃないかと思った。昔、画集を買ったことがあったもんだから。
 そのものズバリ山岸凉子月読―自選作品集 (文春文庫―ビジュアル版)でもよかったんじゃないかなあ、カバー画。
p.s.その2 「新・世界の神話」って銘打っているってことは、こんな感じで世界の神話や悲劇の伝説を小説にしていくの? 別に悪いとは言わないけれど、著者にはもっと「メタボラ」で派遣労働者の悲劇を描いたみたいに、【いま】の現実を小説化してほしいのだがなあ。