江花優子「君は誰に殺されたのですか―パロマ湯沸器事件の真実」
君は誰に殺されたのですか 江花 優子 新潮社 2008-11 asin:4103131810 Amazonで詳しく見る |
まだ若い青年は、湯沸器によって生命を絶たれた。遺族である両親が、警察を動かし企業に生命を重視するよう訴えかける経過を綴ったノンフィクション。
安全・安心なはずの湯沸かし器が、いきなり殺人マシーンとなる…そんな衝撃的な実話である。2ケタの生命が同様の事故で失われたとは恐ろしいことである。障害を負い、いまだ苦しむ被害者もある。
企業側は不正改造だとの姿勢を崩していないようだが、いろいろなことを考えさせられる本だった。警察の初動捜査の躓きも大きかったようだ。
とくに本書からは、健康で元気そのものだったはずの息子を突然このせいで失った両親の嘆き、怒りと悲しみが切々と伝わってくる。
ただ、この本の著者は感情的な部分の描写は非常に巧い(言葉自体は飾り泣く朴訥であるが、それゆえに荒々しい迫力がある)ものの、ノンフィクションとしては事実関係が少しわかりにくかったようにも思える。著者はすでに知っているが、読者はまだ知らないこと(死亡推定日のやりとりなど)の、前後関係が私にはややわかりにくかった。まだ二作目とのことなので、今後に期待だろうか。