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読書の記録

東野圭吾「聖女の救済」

聖女の救済聖女の救済
東野 圭吾

文藝春秋 2008-10-23
asin:4163276106

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 身勝手な男が毒殺された。犯人の目星はついたが、容疑者には完璧なアリバイがあった…ガリレオ・シリーズ長編。
 力の入ったミステリーである。事件自体は地味なもので、殺されてもしょうもないような男がひとり、ひっそりと毒殺されるだけである。だが、コロンボ方式で犯人が冒頭に示され(実は、ここにもちょっとした仕掛けがあるのだが)ている以上、殺しの方法がわからず読者は捜査員と共にやきもきさせられることになる。
 ラストまで読み終えたら構成の妙に舌を巻き、タイトルの意味に戦慄する、そんな本であった。
 ただひとつ納得がいかないのは、犯人の心理。そうでもしなければ、結婚生活がおくれなかったんだろうか。そこまでして結婚する意味もないと思うのだが。それより、そんな男なら子供の良き父親になれっこないし、自分は慰謝料がっぽりとって、愛人に面倒な座を譲り、いずれ高確立で不幸になるであろう家庭を陰から見つめる方が面白そうだが。トリックより何より、それだけ聡明な女性がコトを起こしたあとも平然と生きて行こうとしたりとか、そんなツマラナイ男に惚れたところが、この小説の最大の謎。