読書日記PNU屋

読書の記録

乃南アサ・園田寿「犯意」

犯意―その罪の読み取り方犯意―その罪の読み取り方
乃南 アサ

新潮社 2008-08
asin:4103710101

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 副題「その罪の読み取り方」。裁判員制度導入をふまえた罪と罰の入門書。
 事件部分のストーリーを作家が小説に仕立て、弁護士が行われた犯罪の種類と罰則をコメントしていくつくりなので、いつもの乃南サスペンスかと思って読んだらがっくりである。いかな小説仕立てとはいえど、短編の中でせわしなく犯罪が起きるので登場人物の心の機微を味わうゆとりはない。犯罪もけっこう無理くりに起きるので、読んでいて醒める。 犯罪小説部分は、よく週刊誌なんかに載っている「黒いなんちゃら」シリーズ…現実の事件を参考に創作しました、ってなやつに近いな。
 罰則の解説は、法律用語などもわかりやすく平易な文章で書かれており、好感が持てる。エンタメではなく、裁判員制度への心構えを説く教科書的な本と言えるだろうか。
 ただ、私は以前ミステリー仕立ての裁判員入門書を読もうとして、つまらなくて挫折した覚えがあるので、本書のように多少無理っぽくてもさくさく事件&解説が進む方が読み通せていいのかもしれない。まあ、お勉強になったということでこの評価にしておく。