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読書の記録

西澤保彦「夢は枯れ野をかけめぐる」

夢は枯れ野をかけめぐる夢は枯れ野をかけめぐる
西澤 保彦

中央公論新社 2008-08
asin:4120039714

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 平穏を求め早期退職し隠居生活をする男のもとへ、次々持ち込まれる謎!日常の謎系連作ミステリ。
 最初のライトな感じはかなり好みだったんだが、テーマは徐々に呆け、肉親のいがみ合い、孤独死…と人間関係のはかなさが強調されてゆき、読んでいて暗澹たる気持ちになってくる。高齢化社会の実情をよくあらわした書と言えるだろう。
 悲惨にも思えるラスト、ラストもラストにほんの少しだけ救済があるように見えるが、それすらも解決ではなく殺那的な癒しなのだろうな。著者の本に時折見られる、冷徹さがよく出た作品であると感じた。