東雅夫・福澤徹三・加門七海編「てのひら怪談百怪繚乱篇」
てのひら怪談 百怪繚乱篇 加門 七海 ポプラ社 2008-06 asin:4591103870 Amazonで詳しく見る |
ビーケーワン怪談大賞傑作選、である。創作怪談ゆえに、実話怪談(新耳袋・チョーコワ等)に見られるじわじわにじり寄り来るような恐怖はなく、幻想小編が多めだ。ゆえに、私のような実話怪談至高主義の人間からすると、楽しみどころがよくわからず物足りなさを感じる。じゃあなぜ読んだのかって、怖い話が読みたかったからなのだけど。
印象に残ったものを挙げると、まずは合理性とグロテスクぶりが目をひく飛雄「円筒形の幽霊」。ナンセンスだが音と映像がはっきり脳裏に浮かぶ君島慧是「透明な教室」。
やはり、前回の超新星・ヒモロギヒロシは別格。過不足なくキレのいい文体で、これからの活躍が楽しみ。三崎亜記あたりのシュールな世界が好きならきっと気に入ると思う。
狩野いくみ「からころはつぼ」は得体のしれない不気味な空気が出ていて好み。天津奇常「邪まな視線」はほのかにユーモラスだ。立花腑楽「鬼裂」はちょっと井上雅彦風。幻想小説・物語として楽しいのが、いかにもありそうな岩里藁人「ザクロ甘いか酸っぱいか」、ありがちだがリアルな描写・青木美土里「先祖返り」、ラスト溜飲のさがる有坂十緒子「重ね重ね」、もの悲しい平金魚「謝罪の理由」、因果応報の高橋史絵「トゥング田」、軽快な仁木一青「七夕呪い合戦」、うら寂しいムードのある沢井良太「ヨモツヘグヒ」、平平之信「グレムリン」。
総じて言えることは、タイトルで肝心のオチがネタバレている作品が多めなこと。もうちょっとひねっていただけると展開が読めなくてありがたい。