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読書の記録

久坂部羊「大学病院のウラは墓場」

大学病院のウラは墓場―医学部が患者を殺す (幻冬舎新書)大学病院のウラは墓場
久坂部 羊

幻冬舎 2006-11
asin:4344980042

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 副題「医学部が患者を殺す」。医療制度の問題を見つめるノンフィクション。
 タイトルからは大学病院を糾弾するような印象を受けるが、それだけではない。現役の医師としての視点から無理なことは無理、民衆ウケする理想をマスコミがぶつばかりでは何もならないと断じる本である。
 医療過誤、研修医制度、産科小児科問題、医療崩壊としてメディアをにぎわせる問題の数々が簡潔にわかりやすく実態も絡め解説されており、医療崩壊問題をざっと知りたい人には好著と言えよう。
 少なくとも自分には、参考文献に挙げられている小松秀樹医療崩壊 立ち去り型サボタージュとは何か」よりも本書の方がずっと明解であると思う。本書は2006年の刊行であるが、本書に書かれた諸問題が何ら解決を見ぬまま2008年の現時点でも持ち越されている現実に嘆息。
p.s.ちょっとタイトル&サブタイトルは、キャッチーにしようとしてやりすぎに思える。マスコミとエゴイズムこそが医療を殺す、それが著者の主張であるのだから。