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読書の記録

信田さよ子「母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き」

母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き母が重くてたまらない
信田 さよ子

春秋社 2008-04
asin:4393366255

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 カウンセラーである著者が母娘関係が密着した家庭の歪みを例をあげて解説する書。 私は家出をした人間なので、こうした親子間問題に興味があり、読んでみた。
 重たい母の実例が数列あげられている他、依存や支配のタイプ分類記述もあり興味深いが、読み進めるにつれ、どことなく違和感を感じてきた。
 著者は1997年に「一卵性母娘な関係」という本を出版している。本書のスタンスから見て、未読な私がそれは母子密着=病的なる糾弾の書かと思いきや、仲良きことはうつくしきかな的な本なのだそうだ。《当時から深刻な事例を山ほど目にしていた》著者が、楽観したのは何故?肯定的に書いた理由が《病的という図式に反発》としか描かれていないのは、解せない。自分がまさに、その十年前に密着型家庭に悩みぬいて職を捨て逃散したこともあって、疑問がわく。
 同様に107ページ8行目にも私は違和感を覚える。我が母は、妊娠発覚と同時に子を弁護士か医師にすることを決めていた。うちが極端な少数派かもしれないが、あてはまらない実例だからこそ、《可能性がなければ(中略)欲望は駆動されるはずもない》と断言してほしくはなかった。
 最終章以外は、どちらかというと加害者たる母向けな書物、という印象を私は持った。