乃南アサ「ウツボカズラの夢」
ウツボカズラの夢 乃南 アサ 双葉社 2008-03 asin:4575236098 Amazonで詳しく見る |
母を亡くし父と再婚相手の営む家庭から飛び出した少女が、親戚宅に居候する物語である。
超常現象も殺人も起こらない。ところがこれが、ひんやり怖いサスペンスなのだ。
豪邸に住む人々の冷えきった心、絶望的なすれ違いを侵入者である少女がクールに見つめていく。ちょっぴり「家政婦は、見た!」的趣でもあるが、本書の本質は昔話、お伽噺だと思う。白雪姫かな。
人は変わるのではなく、考え方と選択が変わるものなのか。しかし、〈彼女〉の内側は怖かった。岩井志麻子小説によく出てくるしんねりむっつりの魔性の女、それが彼女かもしれない。思えば、ノベライズ版「ポルターガイスト」でも、一番凶悪なのは〈待っている女〉だったのだから。