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読書の記録

道尾秀介「ラットマン」

ラットマンラットマン
道尾 秀介

光文社 2008-01-22
asin:4334925936

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 できるはずのない子供、ふくれあがる殺意、バンド仲間の不協和音が、殺人を呼ぶ?サスペンスミステリー。

 惹句に「最高傑作!」の文字が踊るが、偽りはないと感じた。この作家って、サプライズはすごいけれどいつも騙し方が強引なのよなー、と思ってるプチアンチな私が言うんだから間違いないって。
 サプライズ自体ならばもっと上の作品があるけれど、家族の重い呪いのような記憶や人の孤独が丹念に描かれ、ラストにカタルシスがもたらされるのが本書のよいところ。タイトルの意味もガツンと効いてくる。巧い。
 完璧とは言い難く、被害者は美人な他は厭なやつなのだがなぜそんな女と主人公が長く付き合っているのか釈然としないし、殺意の成長する心理描写に若干不可解なところも見受けられるが、目をつぶってしまえる程度。
 ミステリーとしては、複雑な仕立てではないので途中で真相を見破る読書もあろうが、過去の不審死とのダブルビジョンもあって、家族物語として飽きずに読める。