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読書の記録

笠井潔・ほか「吹雪の山荘」

吹雪の山荘―赤い死の影の下に (創元クライム・クラブ)吹雪の山荘―赤い死の影の下に
笠井 潔 岩崎 正吾 北村 薫

東京創元社 2008-01
asin:4488012175

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 副題「―赤い死の影の下に」
 冬の山荘に集った名探偵たちの前に現れた死体。探偵たちが推理合戦を繰り広げるリレー小説。

 笠井潔、岩崎正吾、北村薫若竹七海法月綸太郎巽昌章が書き継ぐリレー小説である。以前似たような趣向の角川書店「堕天使殺人事件」堕天使殺人事件を読んで、ストーリーの右往左往の迷走ぶりに(よくない意味で!)驚き、無数空想をまとめるトリの苦労に思いを馳せたものだが、今回はそこいら辺に留意したつくりとの編集者による前書きを読んで、期待することにした。
 だが、本書もまたバラエティに富んだ作風は、魅力より不調和を感じさせて終わった。リレー小説の宿命か、ある著者が鍵と想定していたものが別の著者からはスルーされたり、持ちキャラがはしゃぎだして雰囲気をこわしたり、なかなかに苦し気なのである。一応つじつまのあいそうな解答は提示されるものの、細かい疑問符がたくさん頭にわいてしまう。
 読後、北村薫によるあとがきに共感。冒頭で予感させたように、この物語には彼が必要だったと私は思うのだ。だが、彼の産みの親がトリをとらなかった以上、彼を再び書ける作家がいなかったのかもしれない、そんなことを思った。法月綸太郎によるあとがきにある、あの作家が本書の執筆を辞退した理由とは何だったのだろうか。産みの親なき本作でうろうろよるべなく彷徨った作家の分身を見るにつけ、それが残念でならない。