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読書の記録

海堂尊「医学のたまご」

医学のたまご (ミステリーYA!) (ミステリーYA!)医学のたまご
海堂 尊 ヨシタケシンスケ

理論社 2008-01-17
asin:4652086202

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 中学生の薫は潜在能力テストの成績が良かったことから、東城大学医学部で研究をすることに。ところが、その研究がえらいことになって…父子の絆を描きつつ、基礎研究医療のひとこまを切り取る小説。ミステリーYA!の一冊で、なぜか横書き。

 デビュー作「チーム・バチスタの栄光」でこれはすごい作家(しかも現役医師との二足わらじ!)が出てきたものだと喜んだ私だったが、その後の一連の作品は乗り切れずにいた。だが、この作品は久々にスマッシュヒットだ。
 細かいことを言えば、いろいろ都合がよい、というかウソっぽいところが多々ある。高校生の飛び級ならまだしも中学生はあり得ないし、講義もせずにいきなり現場なんてのも考えにくいし、真相もあまりにウッカリすぎるし、天才ではなくボンクラ劣等医学生でも上から示されたマニュアルさえあれば、その意義がわからずとも単純作業で研究を行うことが可能だしね。功を焦るあまり、常識的な手順をすっとばす藤田の存在でこの辺の矛盾をチャラにしてしまう力技があっぱれ。藤田なしには成り立たないね、この物語は。
 また、この作品は既刊と同じく世界観を共有し、つながりあっているので自らの記憶力の限界に挑戦しながら、あのキャラがこんなところに…(はぁと)などという楽しみ方も一興だ。