町田康「猫のあしあと」
猫のあしあと 町田 康 講談社 2007-10 asin:4062143224 Amazonで詳しく見る |
ココア亡きあとのゲンゾー、奈奈、そしてたくさんの捨て猫たちとの日々を綴るエッセイ。
前作「猫にかまけて」 がたいへんユーモラスその後せつなく素晴らしかったので本書を読んでみた。今回ユーモアは控えめで、悲しくせつなくやりきれぬシリアスな内容だった。
著者夫婦が野良猫を次々引き取るのだが、彼らの多くが深刻な病を抱え、野生生活の記憶から人間を信じられないのである。なんと悲しいことだろうか。そして野良猫保護を遠因にして起きるある悲劇がとても悲痛だ。
著者の野良猫保護は尊い行いだ。だが、善意と愛情をいくらかけても、命を消費してはポイ捨てする〔人でなし〕がいなくならなければ、不幸な猫(に限らず、あらゆるペットたち)は増え続けるのだろう。
無償の愛はあるが、他者にかけることのできる個人の愛情は有限であることを本書から学んだように思う。