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読書の記録

ダン・シモンズ「ザ・テラー ―極北の恐怖―」上・下

ザ・テラー―極北の恐怖 (上) (ハヤカワ文庫 NV (1156))ザ・テラー―極北の恐怖 (上)
ダン・シモンズ

早川書房 2007-12
asin:4150411565

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ザ・テラー―極北の恐怖 (下) (ハヤカワ文庫 NV (1157))ザ・テラー―極北の恐怖 (下)
ダン・シモンズ 嶋田 洋一

早川書房 2007-12
asin:4150411573

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 原題 THE TERROR。
 十九世紀に二隻の艦で北極へ旅立ったジョン・フランクリン隊は母国へ戻ることはなかった。事実をもとに、彼らの壮絶な旅路を豊かな空想交えて語る小説が本書である。

 まず、厚さに腰がひけた。ページをめくれば小難しそうな地図に、人物紹介がずらっと並ぶ。私のような注意力のたりぬぼんやりものに、こんな難しそうな小説が読めるだろうか?疑問が頭をよぎったが、とにかく読み進めることに。
 上巻こそは行きつ戻りつする時間軸、入れ代わり立ちかわりするキャラたちに眩暈を覚えたが、キャラに目鼻が付きだしてからは、俄然面白くなった。
 読む前は、真面目な航海遭難小説か、映画「遊星からの物体X」みたいなパニックホラーかと思っていたのだが、読み終えてみれば、そのどちらでもなく自然の厳しさと人間の弱さ、極限状態だからこそ輝く尊厳を描いた小説であるのだった。ちょっぴり諸星大二郎の描くシャーマニスティック・ワールドに近いかもしれない。
 悩める主人公クロウジャー、素直なアーヴィング、何度もピンチをすり抜けたブランキー、常にプロだったグッドサーは忘れがたい印象を残す。
全く逆の意味で、ヒッキーも印象深い。
 救いはあるが、行程は重く苦しく、身の引き締まるような小説だった。

p.s.ラストの茶色い大理石さんはいったい?