ダン・シモンズ「ザ・テラー ―極北の恐怖―」上・下
ザ・テラー―極北の恐怖 (上) ダン・シモンズ 早川書房 2007-12 asin:4150411565 Amazonで詳しく見る |
ザ・テラー―極北の恐怖 (下) ダン・シモンズ 嶋田 洋一 早川書房 2007-12 asin:4150411573 Amazonで詳しく見る |
原題 THE TERROR。
十九世紀に二隻の艦で北極へ旅立ったジョン・フランクリン隊は母国へ戻ることはなかった。事実をもとに、彼らの壮絶な旅路を豊かな空想交えて語る小説が本書である。
まず、厚さに腰がひけた。ページをめくれば小難しそうな地図に、人物紹介がずらっと並ぶ。私のような注意力のたりぬぼんやりものに、こんな難しそうな小説が読めるだろうか?疑問が頭をよぎったが、とにかく読み進めることに。
上巻こそは行きつ戻りつする時間軸、入れ代わり立ちかわりするキャラたちに眩暈を覚えたが、キャラに目鼻が付きだしてからは、俄然面白くなった。
読む前は、真面目な航海遭難小説か、映画「遊星からの物体X」みたいなパニックホラーかと思っていたのだが、読み終えてみれば、そのどちらでもなく自然の厳しさと人間の弱さ、極限状態だからこそ輝く尊厳を描いた小説であるのだった。ちょっぴり諸星大二郎の描くシャーマニスティック・ワールドに近いかもしれない。
悩める主人公クロウジャー、素直なアーヴィング、何度もピンチをすり抜けたブランキー、常にプロだったグッドサーは忘れがたい印象を残す。
全く逆の意味で、ヒッキーも印象深い。
救いはあるが、行程は重く苦しく、身の引き締まるような小説だった。
p.s.ラストの茶色い大理石さんはいったい?