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読書の記録

島田荘司「リベルタスの寓話」

リベルタスの寓話リベルタスの寓話
島田 荘司

講談社 2007-10
asin:4062142767

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 御手洗が電話により遠隔操作探偵をつとめるニ編を収録する本格ミステリ

 いや、私はやはり御手洗さんが好きなのだなあと再確認。本書では声だけの出演なのだけれども、また彼が中心になって謎を解くミステリが読めるのは幸せ。マイ名探偵ベストワンだからな。
 今回、メイントリックの一つには他作家による前例(注!左のリンク先は、クリックによりネタバレの可能性あり)があるものの、それだけが肝ではないので存分に楽しめる。
 社会派的側面も併せ持つ作品で、民族紛争の歴史から流行の先端まで取り込んでみせる技に、懐の広さを感じる。
 とくに本格ミステリとして見たとき、魅力ある謎の提示と合理的解決の与えるカタルシスは、他作家ではなかなか味わえない醍醐味がある。それを味わいたくて、私はこれからも島田荘司作品を読み続けるだろう。

p.s.「エデン」エデンの命題 The Proposition of Eden (カッパノベルス)や「帝都」帝都衛星軌道、「UFO」UFO大通りでも思ったのだが島田荘司作品は装丁もまた素晴らしい。今回の透明カバーや緑に金インクで印刷した見返し、こげ茶色に銀インクで印刷した中表紙などはうっとりするほど耽美な出来。