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読書の記録

藤原伊織「名残り火 てのひらの闇」

 

名残り火 (てのひらの闇 (2))名残り火 (てのひらの闇 (2))
藤原 伊織

文芸春秋 2007-09
asin:4163249605

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 堀江が知らせを受けて病院へ向かうと、待ち受けていたのは親友の死だった。

 「てのひらの闇」てのひらの闇 (文春文庫)で大活躍した、特殊な生い立ちの業界人・堀江が主人公である。この作品が一部ヴァイオレンス・アクションを描写していながら不思議とカタルシスがないのは、幾つか理由があると思う。まず、暴力を肯定的に書かないのは基本のお約束だが、暴力なくしては動かない小人がいて、ふるわざるを得ない状況に陥った主人公のやるせなさが伝わってくるせいではないか。「てのひらの闇」というタイトルは、それを暗示しているのかもしれない。
 しかし、著者の逝去により、この魅力的な物語が二巻で幕を閉じたことは非常に残念だ。彼らの活躍を、もっともっと見ていたかった。
 三上、ナミ、大原、関根たちにもう会えないのはさびしい。