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読書の記録

石持浅海「Rのつく月には気をつけよう」

Rのつく月には気をつけようRのつく月には気をつけよう
石持 浅海

祥伝社 2007-09
asin:4396632878

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 長江、熊さん、夏美の三人は学生時代からの飲み友達。毎回酒席で推理が冴える、“日常の謎”系ミステリー連作集。

 なにこれ、すごく可愛い。
 いわゆる日常の謎系ミステリーは、他人の事情に探偵役が口をはさむことからどうしても、お節介で図々しい印象を与えがちであった。
 本作品がお節介と無縁なのは、探偵役・揚子江の類いまれなまでの奥ゆかしさと優しさ、そして酒席でレギュラーメンバーがゲストの相談を受けるという設定が効いているのだろう。
 ジャンクフードからグルメの極みまで、毎回魅力的で美味しそうなメニューが紹介される様子は北森鴻の「バー香菜里屋」シリーズに勝るとも劣らない。
 それからラストのサプライズ(これは作者のフェアすぎかつ豊富な伏線から薄々気づいてしまったが、気持ちよく騙されたかった)にはニヤリ。
 血なまぐさいことはなく、上品に思いやりや気遣いに満ちた連作集なので、ミステリー初心者の入門にもすすめたい。