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読書の記録

タニス・リー「悪魔の薔薇」

悪魔の薔薇 (奇想コレクション)悪魔の薔薇 (奇想コレクション)
タニス・リー 安野 玲 市田

河出書房新社 2007-09
asin:4309621996

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 本邦初訳出の短編のみで編まれた愛と魔と死の短編集。

 河出奇想コレクションの一冊。カバー画がとても可愛い。
 私とリー作品との出会いは角川ホラー文庫に収録された「パラディスの秘録」シリーズだった。途方もない謎めいた美しさ、悲恋と残酷に酔いしれたものである。
本書以外の作品もぜひ読んでみたいので続刊に期待したい。
以下簡単な感想を。

「別離」素晴らしき主君に仕える喜びが強いほど、別離の悲しみもひとしお。姫君の誇り高さがぐっとくる。
「悪魔の薔薇」通りすがりの街で会った美少女。恋のときめきや浅はかさを見事に写しとった短編…と思いきや、ラストに驚愕。恐ろしいのは、解説にもある通り主人公のような人間が現実にも少なからずいるところだろう。
「彼女は三(死の女神)」状況が飲み込めるまで時間がかかってしまった。イメージが鮮やか。
「美女は野獣」とても皮肉な作品。ヒロインはだいぶうっかり者じゃないのかな、と思ったら解説によると史実が元ネタになっているそう。
「魔女のふたりの恋人」イメージが美しくてひきこまれたが、ラストがあっさり。
「黄金変成」これも途中まですごい吸引力だがラストがあっさり。
「愚者、悪者、やさしい賢者」こういう昔話っぽいテイストは好きだ。ばあさんGJ。
「蜃気楼と女呪者」オリエンタルな魔法残酷物語。このラストはヒロインに甘すぎるのじゃない?
「青い壺の幽霊」優秀すぎるゆえに孤独な男の選択。男の操るギミックが楽しかった。