近藤史恵「サクリファイス」
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陸上からロードレースに転向した白石は、尊敬するエースのきなくさい噂を聞いてしまうが。ロードサスペンス。
今、近藤史恵がいい。日常の謎系ミステリーを感動的な連作に仕立てた前作「ふたつめの月」も良かったが、本作の味わいと言ったら。読後の余韻も上々で、ああいいものを読んだ、という気持ちに浸った。
とにかく主人公・白石のクールで端正な描写のとりこになってしまう。熱くて一筋縄ではいかない性格のライバル伊庭とはいいコンビ。
私は恥ずかしながら平衡感覚に問題があって自転車にはのれないし、ロードレースもまともに見たことがないばかりか興味も全くなかったのだけど、ただ闇雲に一位を狙うだけではない、こんな面白さがあるとは知らなかった。今度ツール・ド・フランスをテレビでやっていたら試しに見てみようかな。