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読書の記録

小笠原慧「風の音が聞こえませんか」

風の音が聞こえませんか風の音が聞こえませんか
小笠原 慧

角川書店 2007-09
asin:4048737902

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 妄想を抱えひきこもる美青年の訪問指導をする美知。二人はいつしかひかれあうが…。

 現役精神科医である著者が、妄想型分裂病(作中の時代での呼び名、冒頭の注にある通り現在での疾患名は「統合失調症」) の患者とトラウマ持つケースワーカーの物語をものしたというと煽情的に聞こえるが、静謐でタイトル通り耳をすまして風の音を探したくなるような描写が続く。
 互いに我が身よりも相手を思いあう二人の姿は感動的………だと思ったんだがな、前半までは。


注!この小説に感動した人は、以下の文章で不快になるおそれがあります。続きは自己責任で。


 中盤あたりから、なんだかありがちかつ都合の良い展開になってきて興醒め。
 この著者の既刊小説三作全てそうなのだが、ヒロインのヒステリックぶりっこブリが毎回私には共感不可能、理解不能。徹底的に考え方が合わないのだろう。
 いや、そら恋愛はきれいごとだけでは済まないし、女は基本的に打算的な生き物かもしれないけれども、ちょっとこれってどうなのよ。佐伯都合よすぎ。晃ピュアすぎで出来すぎ。美知アンビバレントすぎ。ラストは大方が予想するであろう常識的なところにオチていて、人によっては泣けるだろうが私には無理だった。だって、ヒロインの選択に説得力がないんだもん感動できないよ。はん、冷血でけっこうよ。
 しかし、もう純愛モノって男女どちらかがたやすく治らぬ病でもないと成立しないものなのかねえ。

p.s.これなら私はこっちのカレの方がすきだなあ。