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読書の記録

雫井脩介「ビター・ブラッド」

ビター・ブラッドビター・ブラッド
雫井 脩介

幻冬舎 2007-08
asin:4344013719

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 新米刑事の夏樹が関わった殺人事件の捜査に、軋轢のある親父が先輩刑事ヅラで参加してきて…シリアスな中にもコミカルさ漂うサスペンスミステリー。

 筋立てだけ見ればとてもシンプルだし、ばたばた感のある急ぎ足の解決編も物足りなさを覚える。
 主人公が年齢の割に物事の表層しか見ていなくて子供っぽいのも気になるし、事件自体にも大きな魅力はないが、刑事のひとり・明村の異様さのおかげで飽きずに読み進めることが出来た。ちゃらんぽらんに見えて根は一途とか、実にベタなキャラだよなあ…。現実にはこんな刑事、ギャグマンガの世界にしかいないであろうが、私には好感が持てた。少なくとも、シリーズ続刊が出たら読んでみたい程度には。ただしこのキャラクター描写は両刃の剣であって、コミカルでライトなものを受け入れられる読者には喜ばれるだろうが、一方で本格派、リアル志向の読者にはついていけないノリだと思う。読者の好みが分かれそうな小説だ。「クーガー!」で笑えるか本を投げるか、そのへんが分かれ目な気がする。