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読書の記録

大森望・豊崎由美「文学賞メッタ斬り!受賞作はありません編」

文学賞メッタ斬り! 2007年版 受賞作はありません編 (2007)文学賞メッタ斬り! 2007年版 受賞作はありません編 (2007)
大森 望 豊崎 由美

PARCO出版 2007-05-10
asin:4891947543

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 ネット上では恒例の有名文学賞受賞作予想や、各賞と選者たちの意義と今後を語るシリーズ3冊目。

 1冊目では大好きな漫画家(小説家ではなくて漫画家なのだよ)を酷評されていたので二度と読むかヴォケ!などと憤慨したものだが、読書というのはひとりページをめくる孤独な作業である。読後はいつも、私ってこの本ちゃんと読めてる?こう思うのは私だけ?などと不安にかられ、他の読書家な人々がどのような感想をいだいたのかを知りたくて、ネットの海や本の雑誌などをふらふらさまようことになる。気づけば「本の雑誌」で私がいちばん楽しみにしているのは大森望による新刊評なのであった。
 そんなわけですっかりお二人の毒舌にも馴れ、いやトヨザキ社長の毒舌ってば、ちょっぴりストレィンジな愛情の裏返しではあるまいか?などと失礼な空想をもてあそびながらとくに腹立つこともなく読了。お二人が丸くなられたのか、私がちょっとは穏やかな人格になったのか、どちらなのだろうか。どっちもか。

 
 文学賞の選評がエンターテインメントであることを知らしめた功績は大きい。
 この二人以上に小説本を読んでおられる読書家さんというのもまれだと思うので、このシリーズに自然とたよってしまう(かといって、鵜呑みにはしないしできない)。感想・意見・評価が合わないこともしばしだが、それは読書がパーソナルなものだからなのだろう。だからこそ、感想が似ていたときは格別にうれしいのだが。
 考えさせられたのが「某文学賞の受賞作がとある映画化もされた有名作品にそっくりだったのに、選者が誰もそれを指摘しなかった」ところ。知らないせいで、エピゴーネンが新鮮に見えてしまうって罪よねぇ。かといってこれだけの活字本(あと映画とマンガとアニメにドラマ)が氾濫してしまった世界では、すべてを掌握することは不可能だし。ただ、まねっこ作品はオリジナルの功績と感動をそぐのでヨクナイと、私なんかは思う。

p.s.その1.細かいことだが、今までずっと「島清恋愛文学賞」を「しま・きよし」という、今は絶版になった大昔の文豪かなにかだと思っていたら、そうじゃなくて「島田清次郎」の略だったとこの本で知れてよかった。
p.s.その2.こないだの直木賞空飛ぶタイヤにあげてほしかった。や、エンタメとしては面白かったので。