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読書の記録

勇嶺薫「赤い夢の迷宮」

赤い夢の迷宮赤い夢の迷宮
勇嶺 薫

講談社 2007-05-10
asin:4061825283

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 二十五年ぶりの同窓会に、集まった七人。嵐の別荘に閉じ込められた彼らはひとり、また一人と死んでゆく。一体犯人は誰なのか。
 ジュブナイル作品で人気のはやみねかおるが、大人向けに発表するミステリー。
近所にいる金持ちで平日昼間なおじさんOGが、暗黒版「ぼくと未来屋の夏」のごとき趣だった。
 確かに虚無的でショッキングな物語であるが、いわゆる成年向けなシーンはない。
キャラ立ちはさすがなのだが、メイントリックが、昨年出た某巨匠の作品とかぶっているのがやや難か。ストーリーはもちろん全く違うのだが、サプライズの持っていき方と落としどころが同じなのである。吉村達也作品にも、そんな設定のミステリーがあった。著者あとがきによれば本作品のトリックは長年あたためておられたものだそうで、偶然一致してしまったものかと思う。トリックも特許も早い者勝ちか。
 私にとって一番魅力的な人物があっさり退場することには不満。ここからは蛇足の感想。大人向けならば子供時代の描写は追想にとどめるなどしてもっと削ってもよかったのではないか。成人してからのギャップ狙いかもしれないが、ここ(小学生当時編)だけいつものはやみねタッチなので少々違和感を覚えた。
 この辺は好みにもよるが、せっかく成年向けなのだから、もっと人間関係のどろどろを見せていただきたかったかも。