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読書の記録

加門七海・福澤徹三・東雅夫/編「てのひら怪談 ビーケーワン怪談大賞傑作選」

てのひら怪談―ビーケーワン怪談大賞傑作選てのひら怪談―ビーケーワン怪談大賞傑作選
我妻 俊樹 加門 七海

ポプラ社 2007-02
asin:4591096998

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 一般公募の中から選ばれたえりぬき怪談集。選者は怪談雑誌「幽」などでおなじみの怪に関する達人たち。

 きっちり百話収録の意欲的な怪談集だが、その性質上レヴェルが一定せず、実話怪談と銘打ってもいいリアルな作品と、どう考えても100%創作怪談が入り交じっているのは私的に減点対象。つくづく怪談というものは難しい。創りすぎれば嘘臭く、語りすぎれば興醒めだ。程よい味わいのものは少ないし、文章の巧さと話の怖さもまた比例しない。
 私の印象に残ったものだけ下記に挙げる。しばしば見受けられる、阿刀田高平山夢明の影響多大な作品は除いた。

 ちょっぴりサイコ調の立花腑楽「吉田爺」、呆然感の良い野々宮夜猿「光の穴」、イメージの奔流が素晴らしい(これが読めただけでも本書を読んで良かった!)クジラマク「ガス室」、ええ話や!雨川アメ「連れて行くわ」、設定がコミカルな杜地都「世話」、語り口が滑らかな朱雀門出「のほうさん」、想像力喚起させる黒史郎「祖父のカセットテープ」、これまた落語のごとく愉快なヒモロギヒロシ「デッドヒート」、着想の良いクジラマク「人を喰った話」、いかにも起こりそうな朝宮運河「白昼」、聴覚に利く正本壽美「新幹線」、諸星大二郎チックだが視覚効果の高い「見上げる二人」、淡々とした筆致が雰囲気盛り上げる白ひびき「山の中のレストラン」。

 余談だが以前アメブロでコメント等やりとりしたことのある研修医さんの作品も載っていて、怖いかどうかは置いといて見所は多い本だったと思う。