筒井康隆「巨船ベラス・レトラス」
巨船ベラス・レトラス 筒井 康隆 文藝春秋 2007-03 asin:4163256903 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
巨匠・筒井の繰り出す超絶メタフィクション。
やはり面白いなあ、筒井康隆の小説は。私は本が好きで読書の悦びに淫して好き放題に読み散らしているだけで、大学は理系だし文学の批評とか理論とか歴史も知らない快楽主義読者にすぎないから、本書を適切に評してみせる言葉を持たぬことがもどかしい。あまり内容に触れると未読の人の興趣をそぐであろうので、大まかに言うと本書は作家と文学を考える小説である。同時に現実と虚構が境目なく入り交じり、かつエンタメとしてイケているというエキサイティングな本でもあるのだった。
モデルを想像するも良し、大衆の文字ばなれと出版不況を憂いながら文学の未来
を熟考するも良し、であろう。
ちょっぴり途中までの設定がジャスパー・フォード「文学刑事サーズデイ・ネクスト」みたいでもあるなと思ったが、終盤ある人物の登場により、本書はある部分では文学刑事シリーズを超えたとも言える。現実を巧みに小説に織り込んでみせる匠の技を楽しみたい一冊だ。
p.s.作中である作家が語る自作の内容が、筒井御大の実在小説と同じだったりする。そんな、くすぐりが読んでいてたまらなく楽しかった。
p.s.その2…もしも本当に「ベラス・レトラス」みたいな雑誌があったら…私は、買いません(汗