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読書の記録

貫井徳郎「ミハスの落日」

ミハスの落日ミハスの落日
貫井 徳郎

新潮社 2007-02-21
asin:4103038713

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 著者が実際にその地に赴いて創作した外国を舞台とする短編集。
 富豪がある青年を呼び出し昔語りをする表題作はスペインが舞台。陰のある美女が異国情緒盛り上げるが、真相はズコーッというか、バカミスすれすれであった。
ストックホルムの埋み火」冴えない男が美女に恋したことが、悲劇の始まりだった。短編ながらキャラが立っていて期待したのだけれど、なんともシンプルな筋立てであった。フェアすぎるというのか、ミステリーをそこそこ読んでいる人であれば真相に思い至ってしまうのではないか。ゆえに終盤では殺人課刑事の普遍的問題にテーマがシフトしていくが、そちらこそは数多の刑事モノ、ハードボイルドでありふれたネタであって、特に魅了を感じないのだった。
「サンフランシスコの深い闇」三度夫を喪った女。はたして事故か他殺か?キャラ立ちが半端ないと思ったらシリーズになっているそう。保険屋シリーズで一冊出していただきたいなあ。
ジャカルタの黎明」インドネシアの娼婦殺し、悲しい真相とは。束の間の恋物語。だいたい展開の予想はつくのだけれど、こういうダークな味わいは好きだ。
「カイロの残照」夫を探してほしいという女性にたのまれ、専属ガイドを勤める男だが…。警察になぜたよらないのかと思ったらそういうことか。
「あとがき」旅行先でのあれこれと創作裏話が楽しい。