道尾秀介「片目の猿」
片眼の猿 One‐eyed monkeys 道尾 秀介 新潮社 2007-02-24 asin:4103003324 Amazonで詳しく見る |
ある特技から盗聴専門の探偵をしている男は殺人事件を目撃ならぬ“聴撃”してしまう。
告白しよう、「シャドウ」を読むまでは私が強烈なアンチ・道尾秀介だったことを。言い訳がましいがデビューから三作目までの小説に関しては、発想に非凡な煌めきはあるが騙し方が強引で気にくわない、という自分の下した評価はゆるがない。が、しかし、一作ごとに騙りの腕をあげていく様には脱帽する他はない。
さて前置きはこのくらいにしておいて本書だが、一応ジャンルはサスペンスということになるのだろうか(やもめ探偵一人語りというのはハードボイルドっぽくもあるが)、サプライズ小説というジャンルがあれば間違いなくそこに所属すべき物語だろう。
既刊以上に、騙しの手口はスムーズかつナチュラルに向上しているところがすごい。本格ミステリなのか?というと疑問符がつくかもしれないが、このような奇想光るサプライズ小説をアイディアの限りものしていただきたく思う。次回作が楽しみである。
p.s.面白いけど、騙しのためにソレだと前提で無理が生じるのよね。そこんとこはちょっと疵なので、ちょびっと減点かな。