ジャスパー・フォード「文学刑事サーズデイ・ネクスト3 だれがゴドーを殺したの?/The Well of Lost Plots」上・下
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夫を陰謀で[根絶]された文学刑事サーズデイは、書物の中にひそむことにした。襲い来る魔女エイオーニス、助けてくれるおばあちゃんに生まれたてのジェネリックたちが入り乱れ、人食いミノタウロスも脱走して…!?大興奮のシリーズ第3巻。
いや〜文学刑事サーズデイ・ネクストは面白いなあ。著者はこのシリーズでデビューしたそうだが信じられない面白さである。シリーズの続巻がほんとうに楽しみである。
さて本書では、妊娠中のサーズデイを記憶の魔女[メモノモーフ]であるエイオーニス・ヘイディーズが襲う。夫・ランデンの記憶を失うまいと戦うサーズデイにホロリ、である。
そして本書は魅力的な婆さん小説でもある。エイオーニスの精神攻撃に苦しむサーズデイを支えるおばあちゃん(賢く適切な助言を与えてくれる素敵な存在だ)、仕事の大先輩である頼れるハヴィシャム夫人、それから不気味な予言でサーズデイを惑わすマクベスの三魔女たち。彼女らは、この物語をいっそう素晴らしいものにしてくれている。
目をみはるような奇想天外にして刺激的な書物の中の世界、緊迫したストーリー、キャラの立った者同士織り成すユーモアたっぷりの会話…翻訳物ならではの面白さがここにある。
また、本書の素敵なのはクラシックな名作を絡ませていることで、古典読書案内としても価値があるだろう。
忘れてはならないのが、隠されたラヴストーリーである。引き裂かれながら愛し合うサーズデイとランデンは言うにおよばず、終盤大きなピンチに陥るあるカップルの成長譚にもなっており、ドキドキわくわくさせられる。全ての読書好き・本好きにおすすめしたい作品だ。