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読書の記録

柴田よしき「所轄刑事・麻生龍太郎」

所轄刑事・麻生龍太郎所轄刑事・麻生龍太郎
柴田 よしき
asin:4104711020
新潮社 2007-01-30


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「緑子」シリーズにも登場する麻生龍太郎の刑事時代の物語。彼は、類い稀な推理のセンスを持っていた。
 花荒らし事件「大根の花」、女性変死事件「赤い鉛筆」、通り魔事件「割れる爪」、危機一髪の「雪うさぎ」、とんだ拾い物「大きい靴」と主人公と恋人の旅立ちを予見させる「エピローグ」を収録。
 緑子シリーズは一応読んだはずなのだが、ごめん龍太郎、記憶にない…また折を見て、読み返さなくては。
 龍太郎の繊細なるがゆえの鋭い観察力が、気付かれぬ事件を掘り起こしぐいぐい真相に迫っていくさまが快感。捜査と推理の描写は丹念なのに、犯人側の動機はさらっと流されてしまうことが時々物足りなくはあるけれど、短編の制約ゆえ仕方ないかなと思う。
 そして龍太郎と心の恋人とのむずがゆい関係は、きっと或る種の女性のハートを揺さ振るであろう。脇役までが生き生きとしたキャラクター描写はさすがであるし、ひとひねりしたオチもなかなか。