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読書の記録

小泉知樹「彼女は嘘をついている」

彼女は嘘をついている彼女は嘘をついている
小泉 知樹

文藝春秋 2006-12
asin:4163687009

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 夫婦仲良く、子供は可愛くて仕事も順調。幸せな生活が、他人の嘘一つで奪われるとしたら、そしてしてもいない罪を着せられ、裁かれるとしたら。こんなひどく恐ろしい目に遭い、名誉回復のため今も戦っている男性のノンフィクションである。

 読んであまりの酷さに言葉を失ってしまう。日本は法治国家だと思っていたが、どうやらそれは見せかけだけのようだ。駅員から警官まで、こんなに杜撰な対応をするなんて。もう、誰も信用出来ないかもしれない。
 裁判にしても、審議の場ではなく検察側に擦り寄り、裁判官の個人的印象を述べる場でしかない。その憤怒と絶望は想像にあまりある。ただ一つの救いは、被害者…冤罪男性の職場と家庭のサポートがあったことだ。
 しかし、裁判官というのはとんでもないぐイディオットでも勤まるものだな。大方、暗記だけで伸し上がったのだろうが。
 公明正大であろうとしたことが、美点であるはずのそれがまことに残念ながら被害者男性の不利益になっている。見知らぬ女性が因縁をつけてきたら、無視か罵倒して振り払って逃げれば済んだのだから。丁寧に誠意ある対応をしたがために窮地に立たされてしまったとは。
 今や公園など公共の場にあるモノが盗まれ売られるなど、モラルは地に堕ちている。そんな壊れ歪んだ社会において良識人であるということは、存外危険なことなのかもしれない。