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読書の記録

R.A.ラファティ「子供たちの午後 Among the Hairly Earthmen」

子供たちの午後 (Seishinsha SF Series)子供たちの午後 (Seishinsha SF Series)
R.A. ラファティ R.A. Lafferty 井上 央

青心社 2006-12
asin:4878923237

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奇想天外なSF短編集。

「アダムには三人の兄弟がいた」アダムを始祖としないお気楽な種族・レックの華麗にして奔放な生きざまが愉快。名前しか出て来ない、きらきらしいばかりの絢爛な騙し技の数々が素敵だ。
「氷河来たる」地球上に氷河期がやって来て、アメリカもロシアも凍りつく。非常事態でも人間の本性は変わらないのだなぁ。切迫した状況のはずなのに、妙におっとりした博士が可笑しい。
「究極の被造物」世界一の美女と結ばれる男。世界のお約束の物語。うう、ヴィジュアルを想像すると怖い話なんですけど。衝撃的なラストが忘れがたい印象を残す。
「パニの星」恵まれた星に住む生物パニはとらえどころのない存在だった。これは面白い!サスペンスフルだ。とぼけた会話を楽しむうちに、ゾッとするような展開にひた走るさまが素晴らしい。
「子供たちの午後」宇宙から地球にやって来た恐るべき子供たち。幼児的万能感を持っていて、残酷で、あきっぽく気まぐれで。うーん、恐ろしい子供たちだ。
「トライ・トゥ・リメンバー」学問に専念するあまり、日常の雑事に疎くなった教授。くすっと可笑しい小ネタがいかしてる。
「プディブンディアの礼儀正しい人々」礼儀正しい人々ばかりが住む星。まさか、そんな理由で人が死ぬなんて。手がかりはちりばめられていたが、いやはや。
「マクグルダーの奇跡」狂人の冷やかしだと思われていた申し出は、実は…。価値観違いすぎに呆然。可愛くて不思議で、ほんのり怖いお話。
「この世で一番忌まわしい世界」宇宙からの客人が見た地球。ああ可哀想に。
「奪われし者にこの地を返さん」島の売買の話なのだが、なんと奇妙な状況であることよ!短い話ながら、キャラが立っているのもお見事。
「彼岸の影」精神分析中、興味深い夢に出会ったら。夢の象徴性と脈絡のなさが相まって不安あおるお話。