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読書の記録

島田荘司「島田荘司のミステリー教室」

島田荘司のミステリー教室 (SSKノベルス)島田荘司のミステリー教室 (SSKノベルス)
島田 荘司

南雲堂 2007-01
asin:4523264600

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 本格ミステリー作家を目指す投稿者たちの質問に答える創作上のヒントやノウハウ、台湾メディアとの質疑応答、巨匠の本格論や小説への愛が語られている一冊。

 原稿の作り方からネタの収集など初歩的な疑問にも丁寧なコメントをくださるQ&Aは推理作家以外の文筆業志望者にも有益な内容と思う。
講演録もあって一部重複する内容もあるが、本格ミステリーを牽引し続ける巨匠の言葉は興味深かった。

 表記上気になる点を二つ。




「網脈」というのは網膜の動静脈を指しているのだと想像するが、このような略語が流通しているのだろうか。医療現場ではあまり言わないので目についた。

あと変異を起こすインフルエンザの病原体は「菌」ではなく「ウイルス」である。これには医学史上もややこしい勘違いがあり、インフルエンザ死亡者の肺から検出された菌が「インフルエンザ菌」と名付けられ、インフルエンザの病原体だと思われていた。だがのちにインフルエンザ菌はウイルスが荒らした肺に二次的に感染していることが判明した。真の病原体が「インフルエンザウイルス」と判明した後もインフルエンザ菌の名前は残った。医学生向けの簡易テキストなどでも堂々とインフルエンザ菌がさもインフルエンザの病原体のように記述してあるくらいだから、間違っても無理はないのだけど。

これらの点は実に些細な問題であり、本書の輝かしい理想と意義を何ら損なうものではないが、昔とった杵柄ゆえ気になったのでここにメモしておく。