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読書の記録

枡野浩一「ショートソング」

ショートソング (集英社文庫)ショートソング (集英社文庫)
枡野 浩一

集英社 2006-11
asin:4087460975

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 歌人青春グラフィティ。
 プレイボーイなイケイケ歌人と、イケメンなのにチェリーボーイという自己矛盾をかかえた駆け出し歌人の章が交互に綴られていて、どちらも息を飲むほど面白い。さらりと読める美しい文章にひきこまれた。
 そしてこの本、すごいのは短歌入門になっていること。私のように享楽的な本が好きで短歌にキョーミなんてないしー、みたいなケーハクな読者をもひきこんでしまうのだっ。あからさまにおベンキョーな内容だったら5分で投げてしまうと思うが、すばらしいことに小説の内容に引き込まれながら、どういう気持ちのときにどのように歌をよむのかが飲み込めてしまうのだ。そして読者は、小説の面白さから目が離せず、歌が生まれるプロセスに魅了されていくのである。恋とセックスがくどくない程度に描かれているのもそそる理由のひとつ。ああ、万葉の時代の人々も、時代こそは違えどこんな感じで歌をよんだのであろうと思わせてくれる。
 驚いたのは、すべて実在の短歌を文中で使用していることだ。ごく自然に織り込まれているのである。ふたりの恋のゆくえにハラハラしているうちに、気づけば短歌ファンになってしまうこと請け合いだ。


p.s.巻末に短歌の引用一覧がついている。




蛇足の感想。
著作と作家本人は別物、そんなことはわかっているはずなのに(そうでなかったらミステリー作家はみな名探偵か妄想狂か連続殺人犯だ)文庫本の表紙画…とくに左の人物が…著者近影とそっくりであるので、ついついイメージを重ねて読んでしまった。プレイボーイが黒マスノ、チェリーボーイが白マスノに見えてしまったのである。プレイボーイは本人、チェリーボーイは外見の設定から、ついつい外人顔だが英語はニガテなこのヒト(http://www.jubilo-iwata.co.jp/profile/player/22.php)をイメージしてしまった。

 たいへん面白く、魅力ある小説であるのでドラマ化とか映画化とかしていただいて、10〜20代の若人にガンガン読まれてほしいぞ。

p.s.青年誌でマンガ化された。

ショートソング 1 (1) (ジャンプコミックスデラックス)ショートソング 1 (1) (ジャンプコミックスデラックス)
枡野 浩一 小手川 ゆあ

集英社 2007-09-04


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