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読書の記録

加藤一 編著「「超」怖い話I(イオタ)」

「超」怖い話 Ι (9) (竹書房文庫 HO 37)「超」怖い話 Ι (9)
松村 進吉 久田 樹生 加藤 一

竹書房 2007-01
asin:4812430062

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 今まで鬼才・平山夢明と加藤一とのタッグで語られてきたチョーコワだが、夏の一冊は夢さん担当となり、冬の陣…すなわち本書からは加藤一を編著者とし、怪談オーディション「超―1コンテスト」入賞者久田樹生、松村進吉を迎え刊行されることとなった。
 さて内容だが、愚直(←いい意味で)なまでに実話であることを追求するスタンスとなっている。そこは、より怖くなるのであれば体験談に装飾も辞さず、の「新耳袋新耳袋〈第1夜〉現代百物語との一番の相違点であろう。
 ただ本書、オール実話の縛りゆえなのか、どうもおとなしめな話が多いように思う。チョーコワ・シリーズに通してあった過激なまでの戦慄、大のオトナが夜トイレに行けなくなるほどの恐怖は、ない。そこはかとなくユーモア漂う雰囲気は、加藤一「「弩」怖い話「弩」怖い話―螺旋怪談に近い。
 不条理に謎の余韻ではなくいくばくかの物足りなさを覚えたりもするが、なにしろ新著者を迎え船出したばかりなので、平山怪談と同じ興奮を本書に求めるのは筋違いであろう。引き続き見守っていきたい。
 目新しい「握手」、いい話「食べるんだばって?」、可愛くも不気味な「ぐいぐい」、グロ系の「ごるっ」、ファンタジックな「アレ」、SFちっくな「穢兆」(小林泰三玩具修理者玩具修理者を想起させて惹かれた。現物の映像が入手出来たら、文庫のグラビアに是非!)